■寅彦帳 過去帳(9)■

■2008.01.16 【東洋城再挑戦】

 やっぱり久米っぽく…。まだ東洋城の顔をつかみかねています。練習中。

■2008.01.15 【冬将軍なんて!】

 寺田寅彦(寒がり)

 寒いですね〜! 暑さ寒さの感覚というものはその前の数日の気温が大きく影響するということをどこかで聞いたような…寅彦の文章だったかしら? 季節のくくりで平均気温などを計算すると、確実に温暖化しているようなのですが、ここ数日ずんと冷え込んでいるように思います。
 タブレットをつなぎっぱなしにしているので、気軽に落書きをするようになったのですが、昨日は気合いを入れて描いた東洋城をうっかり消してしまいました。がっかり。
 いや、気合いをいれて描いたというよりは、描き始めは適当だったのが、描いているうちに段々気合いが入ってきたというか、ただ単にぐずぐず筆を入れ続けていたというか、そんな感じでしたが。お見せできなくて残念でした。顔の長さが微妙に短くなったせいで、松根というより久米になりかけた絵…。神(松根の霊?)の見えざる手で消去?
 今日は消去しなくてよかった。

■2008.01.09 【タブレットすごい!】

 寺田夏子 バックは意味なく薔薇

 タブレットの筆圧感知機能が今日になって初めて使えました。すごい! おもしろい! デジタルで漫画なんて描けるの? と今まで疑っていたのですが、こりゃ描けますね!(腕ではなく、科学技術として) 正直、これだけの感覚で線が描けるとは思っていませんでした。科学技術の進歩ってすごい。ちょっとデジタル漫画に挑戦してみたい気持ちになりました。…何を描く気だ。
 調子に乗って描いたのが上の絵です。写真を見ながら描いたはずなのに、全然似ませんでした。そしてデータを縮小したので、線がどうこう筆圧感知がいかほどというのが読み取れない画像になりました。すみません。結局のところ、科学の技術と、絵を描く技術は別・問・題! なんですよねー! 要練習…。

■2008.01.08 【嫁入り】
 蔵書の一部が友人宅にお嫁に行きました。(私が嫁に行ったわけではありません。あしからず。)
 この2か月でかなりの量の本を処分してきたのですが、売っても値がつかないのなら手放すのが惜しくなる、かといってこのまま置いておくにはかさばってしまうような本がミカン箱1箱ちょっとくらいありました。どうしたものかと思っていたら、友人が引き取りたいと申し出てくれたので、渡りに舟、差し上げることにしました。結構遠い所に住んでいるのに、わざわざ車で野を越え山を越えてやってきました。おかげでだいぶ片付きました。ありがたや〜! 本も私の手元でほこりをかぶるよりは、本好きの人のところに行った方が幸せだろうと思います。楽しんでもらえるといいなぁ。
 旅立っていった本の中には思い出深い本も少なくなく、特に横溝正史の黒い文庫本のシリーズは中学生時代に古本屋のワゴンに大量に並んでいたのを端から買った覚えがあります。ワゴンに並べられるような本だから安いのですが、中学生時代のお財布事情からすると結構な出費でした。しかし、夢中になって一気に読んだ気がします。そして、一気に読んだからどの本がどの事件でどういう経過だったのか、頭の中でごっちゃになった気が…だめじゃん。 たしか『仮面舞踏会』は私が高校時代に生物学にハマるきっかけを作った本でした。それがその後の進路にまで影響してくるとは思いませんでしたが。他にも、作品を通して知った世界、知り合った人など、一つ一つを思い浮かべると感慨深いものがあります。金田一耕助シリーズは、ある意味私の青春の一部です。(って書くとなんだか気恥かしいですが…。)
 嫁入り先で、さらにその先もあるかもしれませんが、新たな出会いがあることを祈ります。幸せにおなり…!

 と、ほとんどの本を処分したかのように思える文章でしたが、実際のところ本はまだまだあります。嫁に出そうにも未練がありすぎて手放せない本たちがたくさん…!(笑) パリで買った昔のパリの風景写真集(でかい上にページ数もあってもちろん重い本)とか、100年前くらいの写真を集めた本とか、辞書類とか、図録とか、他にも色々…! 本大好き!

 ところで全然関係ない話ですが、昨年、私はベートーベンの音楽が苦手だということがわかりました。これは私にとってかなり大きな収穫です! なぜなら、今までの人生でクラシックに挑戦したいという時期が何度もあったにもかかわらず、その度に失敗していた原因がベートーベンだったからです。いつも「クラシックで有名な作曲家といったらベートーベンであろう」と、ベートーベンのCDを買って聞いて、どうもなじめず、最後まで楽しんで聞くことができず、クラシック挫折、というのを繰り返していました。交響曲第9番(合唱)なんて、「歓喜の歌」の部分まで耐えられなかった…!
 しかしここ2年、クラシックを耳にする機会が増えて、色々な作曲家の曲を聴いていたら、これがなかなか面白い。クラシック、楽しいじゃん! と思うようになりました。が、ベートーベンの曲になるとどうも調子が違う…。ということで、私はクラシックが苦手なのではなく、ベートーベンが苦手だったということが判明したのです。
 そう思いついてから、自分の嗜好を振り返ってみると、舞曲(ワルツとかポルカ、バレエ音楽とか)、ノリのいい曲、吹奏楽、行進曲、ヴァイオリンでギコギコ激しく弾くような曲が自分の好みであって、そういうクラシック曲だったら存分に楽しめる(楽しめている)ということがわかりました。今までクラシックに挑戦してきた時は、その入口が間違っていたのだ、と思うと、暗雲から一条の光がさしてきたような、図形問題で補助線がうまく引けたような、心がパッと軽くなるような、嬉しい気持ちになりました。別の入口から入っていたらもっと早い段階でクラシックを楽しめていたのではないかとも思ったのですが、それより何より、難しいと思っていたことが、案外自分の手が届く世界、自分にも楽しめるものだということがわかって嬉しい。世界が広がったような気分です。肩肘張る必要なかったんじゃん!
 だから、今後はベートーベンをあきらめようと思います(笑)。クラシック音楽マニアになるつもりはないので、楽しい曲を聴くのが一番!
 ちなみに、今年は指揮者のカラヤン、朝比奈隆の生誕100年です。同い年だったんだー。それから、指揮者であり、作曲家であったバーンスタインの生誕90年。バーンスタインは『ウエストサイド物語』の作曲で有名ですが、私は『キャンディード』の序曲が大好きです。バーンスタインに師事した佐渡裕の指揮で、学生時代に劇場で聴いたことがあるのですが、この1曲で船にのって世界中を旅したような気持ちになりました。スケールの大きな曲で、もうこの1曲だけでもチケット代は惜しくないと思った!(まだ序曲…その先がまだまだあるのに!) 後に別の指揮者でこの曲を聴いたら、スケールが全然違うのに驚きました。指揮者が違うと曲が全然違ったものになるということを知ったのもこの曲…。
 まぁ、音楽は人それぞれ好みがあるかと思いますが、とにかくこの発見が嬉しかったので書いてみました。言わずにはいられなかったというわけです。

■2008.01.06 【明けましておめでとうございます!】
 のんびりとしたペースの更新になるかとは思いますが、どうぞ今年もよろしくお願い申し上げます。

 今年の抱負
・矢島祐利著『寺田寅彦』(岩波書店/昭和24年)読破 ←情報量の多さに、いつも脳がついていけず最後までたどりつけない。
・津田青楓著『漱石と十弟子』(世界文庫/昭和24年)読破  ←独特の文体についていけず、挑戦するたびに途中でくじける。
・小石川植物園『団栗』めぐり

 今年の夢
・熊本旅行(五高)
・加賀旅行(中谷宇吉郎 雪の科学館)
・仙台旅行(東北大学)
・ドイツ旅行(ゲッチンゲン)&イギリス旅行。 ←寅彦の留学が決まったのが今から100年前、留学したのは99年前。ゲッチンゲンから夏目先生に手紙を書いたり、先生から手紙をもらったりした寅彦に思いをはせたいところですが、実現可能性は極小。夢です、夢。夢ぐらい見させてください。

■2007.12.31 【寅彦忌】
 漱石忌と言っておきながら、もうすでに寅彦忌です。師匠も走る12月。あっという間に1年が過ぎてしまいました。楽しいこともビックリすることも色々盛りだくさんだった1年でした。見開き2ページの自分史(一生分)だとしても掲載されるようなことが色々あったなぁ…(遠い目)。楽しいところでは、2度目の高知、2度目の明治村、3度目の明治村、漱石展ハシゴといったところでしょうか! いい1年だった…!(笑)
 しかし、色々ありすぎて年賀状は間に合いませんでした。こ、これから書きます…。

 さて、12月29日、30日と東京に遊びに行っていました。新橋に泊まったので、夜は銀ブラ。イルミネーションが美しかったです。都会じゃのう。
 去年は日本橋〜有楽町を歩いたのですが、今年は新橋〜有楽町です。このあたりは学生時代に劇場通いでかなりブラブラしていたので、土地勘があります。といっても、洒落たショップだとか、ビストロだとかに詳しいわけではなく(全然!)、本屋とか、画材・文具の店だとか、ファストフード店とかの位置をよく知っている、どこを歩いても駅の方向が大体わかる、というだけです。間違ってもプランタンで化粧品の買い物とかはしません。っていうか、どこのデパートの化粧品売場でも、何だか場違いな気がして早足で逃げ去ります。においに酔いそう…。閑話休題。
 で、銀ブラですが、今回も風月堂で紅茶と苺ショートを食べてまいりました。しかし、店の場所が違ったのでリーズナブルでした。銀座5丁目と6丁目の境にある銀座風月堂というお店で、座っていると街を行く人々とイルミネーションとが見えて、銀座に来ているんだなぁとしみじみ思いました。ただ、去年行った方(東京風月堂銀座本店)のがケーキがふんわりとして美味でした。高かったですが…高かったですが…。(※苺ショート441円、紅茶893円←『サライ』第390号による) 風月堂という名前は同じでも、喫茶室のメニューは違うんだなぁと驚きました。
 東洋城じゃないけれど、喫茶店の席に座って紅茶を飲みながら寅彦がいた銀座を妄想…いや、想像していました。寅彦の生きていた時代とは随分違うのでしょうが、寅彦が銀ブラしていたんだなぁと思うだけで十分です。満足満足。

 30日は某所で某さんとお会いしたのですが(わかる人にはわかる)、寅彦強化のスペシャル夏目先生カレンダーをいただき大感激でした。ついていきます!!(笑)
 しかし、ウサギの人形を2度ほど落としました。すみません。壊れなくてよかったです。そして、銀ブラしながら見つけた「トイレ川柳」トイレットペーパー(かさばる)を差し入れと言って押し付けました。すみません。おつりを渡しまちがえかけました(算数苦手)。すみません。見せていただいたネタを図々しくもメモらせていただきました。すみません。訂正文は次回の載せ忘れるかもしれません。すみません。(←先にあやまっておく。)
 しかし、楽しかったです! またよろしくおねがいします☆

 こう書いて見ると、何だかいい1年だったように思えます。終わりよければすべてよし。
 それでは、よいお年を!!

■2007.12.08 【怒涛の11月】
 今年の11月はプライベートの面で色々なことがあって落ち着かず、更新も遅れておりました。自分史に残るような出来事が重なりました。何が起こったかはあえて書きませんが、婚約・結婚・妊娠に関する事柄ではないことは断言しておきます。平和平和。
 落ち着かない勢いで部屋を片付けていました。1週間、ものすごい勢いで…。そうしたら、片付け疲れでその後1週間ぐったりしていました。あほです。つくづく休みが待ち遠しいです。

 もう師走ですね。明日は漱石忌。

■2007.11.22 【小山文雄著『漱石先生からの手紙』(岩波書店/2006年)】
 買ってから随分たつのですが、ようやく思い立って読みました。寺田寅彦、小宮豊隆、鈴木三重吉の3つの章で、夏目先生とそれぞれの間に交わされた手紙を紹介していくような内容でした。非常にベーシックな内容。知っていることが多かったので特に大きな発見はなかったのですが、そうそう、そういえばそうだったっけ、などと思いながら読んでいました。にゃるほどねー。結果的には、今までそれぞれバラバラに読んで知っていたことを系統立てて復習できてよかったような気がします。
 寅彦の章が一番長い(ニッコリ)。
 参考書目の欄に津田青楓著『漱石と十弟子』の文字が…やっぱり読まなきゃだめですかねぇ。章によって津田が一人称だったり三人称だったりして読みにくいんですよね…。1日1章と決めて、それ以上読まないようにすればいいのかしら。

■2007.11.18 【子規堂もっとちゃんと管理してよ!】
 パソコンから今まで聞いたことのない「グググググ…」という音がしています。友達に言ったら、「データは外に避難させておきなよ!」と言われました。そろそろヤバイのかなー。買ってから大体5年になるノートパソコンを使っております。

 さて、書くのが遅くなってしまったのですが11月6日放送のテレビ東京『開運!なんでも鑑定団』の「お宝発掘!諸国鑑定めぐり」が道後温泉編でした。期待しつつ見たら、やっぱり子規ですよ、漱石ですよ、皆さん!! 録画してよかった〜!
 子規堂でおなじみの正宗寺が最初に登場。寺秘蔵の品の数々が紹介。子規と漱石の双幅の掛け軸(これは同時に書いたものではなく、子規の没後に乞われて書いたのだとか)が鑑定額700万円だとか、子規筆の『東海紀行』草稿(一番最初に書かれたもの?)を巻物にしたものが鑑定額1000万とか…住職がニコニコしていました。ニコニコするくらいだったら子規堂の整備をもっとちゃんとしてちょうだいよ〜!! 撮影の時もやっぱり土足で入館していました。やっぱり…。
 鑑定士の人も言っていましたが、子規の直筆を生で間近で見るチャンスなんてそうそうないことだと思います。しかも、若い頃の草稿。いいなー。子規堂については不満がたくさんあるのですが、あの寺にそんな素敵なものが収蔵されているのかー、と思うと、松山に再び行ってみたいような気持ちになりました。見ることはできないとはわかっていても…。
 他の場所でも、碧梧桐の掛け軸やら、不折の書の屏風やらが紹介されていました。松山おそるべし。

 ところで『直筆で読む「坊っちゃん」』(集英社新書ヴィジュアル版)、買っちゃいました☆ 石原新太郎の原稿の字は読めないと思いました(解説より)。漱石の字の方がずっと読めますよ! 語弊があるかもしれませんが、漱石のペン字はかわいい字だと思います。もともと書き文字を読むのは好きなので、変体仮名と崩し字に慣れたら、結構読めるかもしれないと思いました。昔ちらっと書道でかな文字も習ったので、勉強したら筆文字も読めるようになるかも…。ただ、その気力があるかどうか。
 そういえば、寅彦の現存の書簡で一番古い、子供の頃父親宛てて書いた手紙も変体仮名を使っていました。高知県立文学館に実物が展示されていてビックリした覚えがあります。

■2007.11.15 【柴田宵曲著『明治風物誌』(ちくま学芸文庫)】
 のんびり少しずつ読み進めていた柴田宵曲著『明治風物誌』読了。明治時代のあれやこれやを語る宵曲先生の筆致に魅了されっぱなしでした。どうすればこれだけの知識を1人の人間が身につけることができるのか、しかもそれが単なる「情報」ではなく、血となり肉となり、筋の通った見解として表現することができるのか、不思議でなりません。本当に「希代の」人としか思えません。
 それから、森銑三の序、池上浩山人の「宵曲先生のこと」、解説の加藤郁乎「希代の明治居士」にもじーんときます。表紙が井上安治の画というのもナイス。グッジョブ筑摩書房。
 文庫にしては1300円+税と高いのですが(学芸文庫だからねぇ)、買っても損ではない、それどころかお買い得という感じのする1冊です。1項目が短いので、電車で読むのにもピッタリ!(笑) 最初から読むもよし、辞書的に項目を探してみるもよし、寅彦の出ているところばかりを拾い読みするもよし(笑)、これからも幾度となく読み返すのだろうと思います。とりあえず、本棚にある『明治の話題』の隣に並べて満足しているところです。

■2007.10.30 【ウッカリ】
 先日神田の古書店で買った津田青楓著『漱石と十弟子』(世界文庫/昭和24年)は図書館にありました。ウッカリ、ウッカリ。でも、寅彦が載っているのだから仕方がない。
 そういえば、津田の文章って読みにくいな〜と思った覚えがあります。画家だから文章がうまくなくても当然か〜とか思った覚えもあります。でも、内容をあんまり覚えていなかったからいいや!(え?)

■2007.10.29 【小林勇著『人はさびしき』(文藝春秋/昭和48年】
 幸田露伴と斎藤茂吉の違いについてご教授いただき、ありがとうございます! 道筋をつけてもらうというか、目印を教えてもらうというか、おかげさまで区別がしやすくなってきたように思います。まだきちんと消化できてはいませんが…。例えば、ひげの形が全然違う、というなら理解も早まるのですが! そうもいきませんよねぇ(苦笑)。以前試したように、写真を見ながら似顔絵を描きまくったら覚えるかもしれません。ビジュアルから入る派。

 さて、『人はさびしき』が読み終わりました。小林はたくさんの人と出会ってきたのだなぁという印象が強かったです。そして、出会う人が多いということは、別れも多く経験しているということ。たくさんの個性的な作家たちとの交流をユーモアを交えて書いた本なのですが、1つ1つの文章を単独で読むよりも、1冊を通して読んだ方がそれぞれの人の死や、別れのエピソードがしんみり伝わってくるように思いました。もしかするとタイトルの『人はさびしき』という言葉に引きずられているだけかもしれませんが…。
 以下メモ。
 「文豪の夫人たち〈寺田寅彦〉」pp.72-76
 「岡田武松」pp.187-208 『気象学』 明治7年生、一高→帝大→中央気象台 著書『海と空』に対して、寅彦は批評文を寄せている。岩波書店の『防災科学』講座。(命名は監修者の一人である寅彦だったとか。)

■2007.10.29 【神田古本まつり】
 昨日、友達と一緒に神保町へ遊びに行きました。神田古本まつりというのがあるということは昔から知っていたのですが、実際に行くのは初めてだと思います。もしかすると行ったことがあるかもしれないのですが、行ったとしても10年以上前の話。もう記憶にございません。昔も本は好きでしたが、今の方がずっと本が好きなので(しかも神保町の古本屋で扱っているような古本に興味が出てきたのはここ数年に著しいので)、今の方がずっと古本まつりを楽しめるようになったのだと思います。事実、楽しかった!! 朝10時から夕方4時頃まで古本屋界隈にいました。満・喫!
 まずはすずらん通りの「本の得々市」というのを見て回りました。出版社、書店などによるバーゲン価格本、汚損本などのワゴンセールです。私が最初に買ったのは、神保町の地図と喫茶店の絵葉書セットでした。(地図は好きなのですが、読むのは上手ではないので、家に帰って見たら自分がどこを歩いたのか探すのに時間がかかりました。方位・縮尺のきちんとした地図、しかも1枚ものでないと読むのに時間がかかります…。) それから、東京大学出版会のワゴンを見つけて、無料配布のPR誌『UP』の最新号を1部もらいました。もちろん山口晃の『すゞしろ日記』が目当て(笑)。(※2007.10.24参照。) 友達にも薦めました。もう、この時点で「古本まつり、来てよかった!!」と大満足の気分。
 そのまま歩いていくと岩波書店のワゴンも。まわりのワゴンでは10%引き、半額、90%引き、など、割引割引の嵐吹き荒れる中、岩波書店は定価販売。徹底した正札販売。さすが岩波書店。創業者の理念を守るかたくなさにトキメキすら覚えます。それでこそ岩波書店。(ちなみに、割引ではなく、岩波文庫の稀少なタイトルをそろえるということで他店と差別化を図っていた模様。) 得々市は本屋に限らず、時々飲食店があるのがまつりっぽくて楽しかったです。
 ワゴンセールを一通り回り終え、古本屋を覗きに行きました。とあるカレー屋の前で呼び込みの人に道行くおばさんが「おいしいの?」と聞いているのを発見。友達に「(店の人においしいかどうかきくなんて)愚問だよねぇ。まずいって言うわけないじゃん。」といいつつ歩いていたら、何だかその店が気になりはじめ、さらにこのままでは昼食を食べ逃しそうな気になってきたため、店までもどって昼食をとることになりました。外国人の料理人が作っているカレーはスパイシーで美味でした。ボリュームもたっぷり。
 お腹もいっぱいになったところで、本格的に古本屋めぐりへ。朝もたくさんの人がいましたが、さらに人が増えている印象。狭い歩道に人があふれていました。新幹線でいったら乗車率200%といったところ。道端で漱石の『吾輩は猫である』の初版の復刻版(箱なし、開封済み、全3巻揃い)が1500円で売っているのを見つけたものの、漱石はあまり読まないしな〜、今買ったら重いよな〜、と思い、結局買わずに通り過ぎました。後で通ったらもうありませんでした。誰かに買われていったようです。そりゃあ買うよね。
 某古書店で津田青楓著『漱石と十弟子』(世界文庫/昭和24年)を発見。1000円。「仕方ないよね、寅彦が載っているんだから。仕方ない。」と言っていたら、友達に「合理化?」と言われました。日焼けもしているのですが、戦後の紙の状態の悪い時代の本なので、壊れないように注意したいと思います。早速書店の包み紙を折ってブックカバーにしました。
 歩いていると、『小林勇文集』が揃いで7000円で売られているのを見つけ、心がかき乱されました。友達に「私の乙女心が揺れているよ…!」と言うと、「乙女心?」と怪訝な顔をされてしまいました。しかし、置く場所もないし、お前はそこまで小林勇のファンか? という神の声(?)により、今回は保留に。必要になったら図書館に頼りたいと思います。縁があったらまた出合うこともあるでしょう…。
 ところで、以前神保町を歩いたときに気になっていた、新書サイズの『寺田寅彦全集』全17巻(岩波書店/1960〜)。図書館にもあるのですが、今回、神田古本まつりに来た記念に購入を決意。何軒かの店先に置いてあったのをチェックしていたのですが、後で行ってみると某古書店の店先にあったものがない! しかし、ショックを受けたというわけではなく、私の他に寅彦の本を買い求めている人がいると思うと何だか嬉しい気持ちになりました。いるんだなぁ、と。しかしながら、このことが購買意欲に火をつけたというのも確かで、別の古書店まで行って全17巻揃い(月報付)、5000円で購入。期間中、会場・各古書店で合計5000円以上購入すると配送無料、ということなので、送ってもらうことにしました。(翌日届いた! 早い!!) ちなみに、この全集は現代表記、ページ数の都合上日記・雑編等はかなり省略しているとのこと。まぁ、詳細を調べるときには、図書館にある新しい全集(全30巻/岩波書店/1996〜)を調べに行けばいいので、手元に置いたり、持ち運んだりするにはこちらでいいかな、と思っているところです。将来、立派な身分になったら新しい全集を揃えてみたいと夢見ていますが、絵空事にすぎない気が…。書簡編だけ買う、ということはあるかもしれません。それにしても、こういうのって、各巻の箱をどうするか、悩む…。
 そんな調子で、古本まつりを楽しんできました。これから買ってきた本を紐解いてさらに楽しむのです。まつりの最中だけでなく、終わってからも楽しめるなんて素敵…☆
 ところで、せっかくなので、リニューアルして利用者数が4倍にもなったという千代田図書館にも行ってみたのですが、休館日でした。残念。(調べてから行けよ…。)

■2007.10.25 【読書の秋】
 みっちりぎっちり長文が続いているのは、この半年本を我慢し、更新を怠っていた反動かと思われます。本日は軽くメモ。

 嵐山光三郎著『人妻魂』(マガジンハウス)。人妻?! と、妙にひかれるものがあったので、図書館の新刊コーナーでパラパラめくってみたら、紹介されている53人の人妻の中に、漱石の妻、芥川の妻など、文豪の妻たちが登場。私のアンテナ、絶好調です(笑)。紹介されている人数が多いので、自然1人あたりのページ数は少なくなり、エピソード紹介程度の内容です。人妻のカタログ?(語弊がありますよ。) 今回はパラパラ見てそのまま返してしまったのですが、また機会があったら手にとってみたいと思います。

 夏目漱石著『直筆で読む坊っちゃん』(集英社新書)。アマゾンのトップページで見かけて気になっています。本屋で見てから買うかどうか決めようと思っているところです。噂の「く」が気になっています。「久」かな?(見てみないことには何とも。)

 小林勇の本を読み返しています。『人はさびしき』(文藝春秋)、『小林勇文集』第1巻(筑摩書房)。先日(2007.10.23)書いた結城哀草果(ゆうき・あいそうか)について触れられている部分がありびっくり。アンテナ絶好調? 以前図書館で借りたときには寅彦の部分を拾い読みだったような気がするのですが、他の部分もおもしろいということがわかってきました。小宮についてとか。「
茶屋では先生(小宮)は機嫌よく、芸者たちは皆先生を好んでいた。先生はおしゃれで自分の美男子なことを確信していた。」(『小林勇文集』第1巻 p.143) とか。確信していたんだ…(笑)。
 まだ途中なのですが、思うに小林は作家たちと接する時(酒の席かもしれませんが)、気軽に猥談をする性質なのではないかと。そういった話がちらほら。作家本人と接する人だからこその貴重な情報…?

 ところで、最近、私は幸田露伴と斎藤茂吉の区別がついていないことが判明しました。どちらの作品を読んだこともなく、人物のこともよく知らないせいだと思います。全然違いますか?

■2007.10.24 【ジャケ借り(じゃけがり)】
 寅彦とは関係がない本について。
 実は試験が終わる前の時期、山口晃(やまぐち・あきら)という画家がちょっとしたブームになっていました。私と職場の人の間で…(小規模)。
 きっかけは東京大学出版会の雑誌『UP』に連載されている『すゞしろ日記』という1ページのマンガでした。「山口晃」という人の日常をフリーハンドで書き綴ったものなのですが、枠線もフリーハンド、誤字があってもぐちゃぐちゃと消して修正液で消しもしない…一体何者なの、と思いつつも毎回楽しみに読んでおりました。それを見た職場の人がどんな人物かを調べたら、立派な画家だということが判明。さらに、個展が練馬区立美術館で開かれている(しかもその週末までの期間で!)ということまで教えてくれたものだから、一気に気持ちが高まっていてもたってもいられず、週末には練馬に飛んで原画を拝んでいました。いや〜、何が起こるかわからないものですね。1年以上東京大学出版会の編集の誰かが手遊びに描いているのであろうと想像していたのに、画家だったということがわかって練馬に行くまでたったの2日。3日前には何者かも知らなかった人の画集を買い、グッズを買うようになるとは誰が想像したでしょう。(大げさ?)
 展示された原画を見て、雑誌で見たあの挿絵(@)、本屋で見たあの本の表紙(A)、大好きなあのCM(B)の絵をこの人が描いているということがわかり、とにかく驚きました。作者が誰かというのを知らなかっただけで、好きだったんじゃん!! と思いました。まさか同じ人が『すゞしろ日記』を描いていたとは思いませんでしたが。(ちなみに、@は「ブルータス」No.599の『若冲一代記「お絵描きだけが人生だ」』若冲の人生を4ページにわたってすごろくで描いたもの。Aは三浦しをん著『風が強く吹いている』(新潮社)。未読です。Bは公共広告機構の『江戸しぐさ』(2006年)、『百貨店圖 日本橋三越』(2004年)100年に一度の売りつくしセールのCM、NHKデジタル放送開始告知『祝 放送開始』『地上デジタル放送成る』(2003年)など。) 緻密で、ユーモアあふれる描写、細部まで楽しめて、もう、大好き!! 練馬まで行った甲斐がありました。買ってきた画集『山口晃作品集』(東京大学出版会)はいくら見ていても飽きることがありません。文語調のコメントもおもしろい。唯一残念なのは縮小がかかっていること。実物を見ても「細かい!」と思うくらいなのに、縮小がかかってしまうとさらに細かく…。もっと大きなサイズで出版してほしいです。それから、『すゞしろ日記』も単行本化してほしい…(笑)。

 で、これまでが前置き。(長くなってすみません。) ここからが本題の「ジャケ借り」です。
 ある日、NHKの「週間ブックレビュー」という番組を何とはなしにつけていたら、ちらっと見えた本の表紙の絵がどうも山口晃くさい…! その本が登場すると、真剣になって話を聞いていたのですが、表紙をずっと映しているわけではないので、なかなか確認ができない。少々苛立ちつつ見ていたら、ついにその本の装丁が山口晃だということが判明。やっぱりね〜! 自分の山口晃に対するアンテナの感度が高まっていることを誰かに自慢したい! と思いつつ、図書館の所蔵を調べたら貸出中…。予約を入れて、やっとのことで読むことができたのですが、なかなか面白かったです。…と、一体何の本かといいますと、ドナルド・キーン著、角地幸男訳『私と20世紀のクロニクル』(中央公論新社)、著者の84年にわたる人生を綴った自叙伝なのであります。
 ドナルド・キーンという人の名前は聞いたことがあったのですが、どんな人かも知らず、著作を読んだこともありませんでした。私に読めるかな〜と思ったのですが、読み始めるとなかなか面白い。世界的な不況の中、少年時代を送り、日本文学に出会い、第二次世界大戦では通訳として日本人捕虜や戦場に残した日記と出会い、戦後は日本文学の研究、作家たちとの出会い…「何があった」というよりも「何と出会ったか」「誰と出会ったか」が多く書かれているように思いました。その出会いのひとつひとつが温かく感じられるのは、著者の人柄を表しているのではないかと思いました。歴史の年表から見たら、必ずしもいい時代に生まれ、大人になったとはいえないのですが、数々の出会いに彩られ、実りのある幸せな人生だったのだろうと、この本を読んでいて思えました。(まだご存命ですが。) ユーモアを交えた読みやすい文章だったので、2日で一気に読んでしまいました。
 それにしても、たとえ日本人でも、私はドナルド・キーンのように日本文学のことは知らないし、この先もドナルド・キーン以上に日本文学のことを知ることはないだろう、とも思いました。彼の日本文学への、また、日本への愛は相当なものだと思います。それにしても、語学が得意ではない私からすれば、どうすれば複数の言語を習得することができるのか、アルファベットの国の人が、どうして日本語を習得できるのか不思議でなりません。これも愛ゆえ…?(日本語との出会い、日本語の習得の過程も書いてありましたが、すごいなぁと思うばかりでした。努力ももちろん必要なのでしょうが、努力だけでは外国文学を原著で研究することはできないと思います。古典から現代の文学だもんなぁ…。)

 CDなどを中身というよりもジャケットを見て買うことを「ジャケ買い」といいますが、私は本を中身というよりも装丁を見て借りることにしたので「ジャケ借り」としてみました。たくさん挿絵があったわけではないのですが、楽しいセレクトでした。表紙、よく見ると、キーン少年が歯医者で「死ぬるー」と言ったり、床屋でむすっとしたり、映画を見て満足したり、おもしろいです。そういった様子は本文を読めばチャンと出てきます。

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